活動日記  

県・県教育委員会・ならチャレンジドの恊働事業「地域社会で生きる!」特別支援生徒の社会参加および就労支援

活動日誌 2012年 8月

2012年8月21日

初の奈良県高校生議会

~奈良東養護学校生徒が質問!~

●奈良県議会

奈良県内の高校8校から生徒34名が参加して、初めての高校生議会が開催されました。県議会と同様に、高校生が観光振興・災害対策・福祉施策等県政への積極的な質問を行い、荒井知事らが答弁されました。奈良東養護学校から4名(高等養護部3名、病弱部1名)が質問および提言しました。

【質問】多様な雇用機会の創出について

奈良東養護学校高等養護部3年生 山岡 昇平 議員

 僕は、現在、卒業後の就労に向けて毎日の活動に励んでいます。学校では、進路担当の先生を中心として、職場実習を受けてくれる企業などを探してくれています。そのおかげで、僕たち生徒は職場実習をすることができています。
 しかし、職場実習ができたからといって、必ずしも就労に結びつくとは限りません。ですから、先生たちは職場実習をさせてもらえる企業だけではなく、僕たちの卒業後の生活のことを考えながら、就労させてくれる企業や会社も必死になって探してくれています。
 僕は、今、3年生です。僕が卒業する時の、障害者の雇用はどんな状況なのでしょうか。このことがとても不安で、将来のことを心配しています。また、現在の状況が厳しい状況にあっても、今後、後輩たちのために状況を改善する方法を探っていかなければならないと思います。
そこで、知事にお尋ねします。
奈良県が「多様な雇用機会の創出」についてどのように取り組んでいるのか、障害者の雇用対策を含めて詳しくお教えください。

【荒井正吾知事 答弁(要旨)】

 障害者の方が地域でいきいきとした生活を送るには、就労を通じた社会参加の実現と収入の確保が何よりも重要です。
平成23年6月1日現在、奈良県の障害者雇用率は2.08%であり、全国平均1.65%をかなり上回っており、全国第4位です。しかし、障害者が必ずしも希望する仕事に就労できていません。
そのため、働くことを希望する障害者と企業等をマッチングさせる奈良県版の「障害者雇用システム」の構築を目指しています。今年度から、特別支援学校の新卒者の就労を重点的に支援するために、県が特別支援学校と企業の間に入って新たな職場実習先や就労先の開拓などに取り組んでいます。
また、障害者が作る生産品の優先購入・販売なども努力します。今、奈良市の東向商店街にある「KIZUNA café」では、県の施設を利用して障害者の方がサービスする飲食、事業所で作られるパンなどを売っています。いろいろ試行錯誤しながら、就労の場の確保、稼げる機会の創設に取り組んできています。
また、障害者に限らず就労状況は厳しい状況です。奈良県内の女性就業率は一番低く、県外就業者も多い状況です。奈良県内で働ける場をもっと創りたいと思っています。
一方、奈良は暮らしの環境がいいので、奈良で暮らして、奈良で働くような職住接近のシステムができればと思います。県では、子育てや介護、障害などの個別の事情やライフスタイルに応じた弾力的な働き方ができるように、短時間の仕事や自宅での仕事を企業にお願いしています。
福祉、社会保障のみならず、教育、労働など、県内の各界・各方面と連携を深めて、県がそのセンター的な役割を果たし、障害者の住まい、働く場、暮らしの場を確保していきます。


【質問】障害者支援の充実について

奈良東養護学校高等養護部3年生 松田 侑也 議員

 僕は、障がいのある人たちにとって、「働く・暮らす・楽しむ」、この3つが大切であると考えています。
 まず、「働く」では、僕たちは特に新しい環境にとても不安を感じますし、慣れるまで時間がかかってしまいます。短期間の実習でさえも、僕たちは不安で仕方がありません。進路担当の先生は、「企業にジョブコーチいればいいのにね。」と言っておられました。ジョブコーチなどによる職場での支援の充実が必要だと思います。
 「暮らす」では、ケアホームの設置が進んでいないと聞きました。僕たちが希望した時に、希望した場所に入所できたらうれしいなあと思います。また、給料からいろいろなものが引かれるとも聞きますので、できるだけ利用料を安くして欲しいとも思います。  「楽しむ」では、安心していろんな事ができたり、そこに行けば友だちがいるような場所があればいいなあと思います。
そこで、荒井知事にお尋ねします。
 奈良県の示した『健やかに安心して、いきいきと暮らす』というテーマの目指す姿の中に、「誰もが住み慣れた地域で、健やかに安心して、生きがいを持って暮らすことができる体制を整備します。」さらに、「障害者支援を充実します。」と書いてありますが、具体的にどのような取組をお考えでしょうか。僕たちが「安心して、いきいきいきと暮らす」ことができるようにどのような取組を進めていかれるのかお教えいただきたいと思います。

【荒井正吾知事 答弁(要旨)】

  本県の障害者施策は、2つの大きな柱で進めています。一つ目は「生涯を通じた支援」、2つ目は「生活全般にわたる包括的な支援」です。
生涯を通じた支援というのは、乳幼児期から高齢期まで、生まれてから亡くなられるまで、途切れのないように支援するということです。学校にいたときは充分応援してもらったが、卒業したらなくなるということでは困るということです。また、生活全般にわたる包括的な支援とは、住まう場所、働く場所、いきいき生活できる場所、3つの点について充実した生活を送ってもらえるようにしたいということです。「働く」、「暮らす」、「楽しむ」の3つです。
「働く」については、企業等に就職し定着できるよう、関係機関との連携をしながら支援します。一般就労が困難な方については、福祉的就労における工賃向上などの支援に取り組んでいきます。障害者の方の工賃はなかなか上がらないのですが、稼げる場を県自体が創っていくようなことも熱心に考えていきたいと思います。
二つ目の「暮らす」については、「ケアホームの整備」をしていきます。県営住宅に障害のある方が住まわれるように取り組んでいます。
三つ目の「楽しむ」については、スポーツとアートを通じて暮らしを楽しむために障害者芸術祭、イベントを開催して障害のある人が様々な人と交流できる機会づくりに取り組んでいきます。
障害のある人たちにとって、「働く、暮らす、楽しむ」の3つの要素は、とても大切です。県関係部局、県庁外の関係機関と連携をとり、県が率先して実践することをモットーにして、障害者支援に取り組んでいきます。
苦労はありますが、苦労が生きる力を与えてくれると考えています。


【質問】高等学校・特別支援学校間の転編入について

奈良東養護学校病弱部3年 泉岡 大樹 議員

僕は、高校と特別支援学校間での転入や編入についてお尋ねします。 僕は、中学3年生の秋に、脳内出血で、県立奈良病院に隣接される救命救急センターで3ヶ月の入院生活を余儀なくされました。幸いにも、受験を済ませていたので、退院後高校に入学することができました。しかし、脳内出血の後遺症で、左半身麻痺が残り、単独通学も難しくなりました。そして、高校の授業にもついていけず、精神的にもまいってしまい、学校には行けませんでした。
 高校1年の秋、奈良東養護学校に病弱教育部門があることを知りました。その翌年の春に受験をし、入学となりました。15歳の僕にとっては、とても辛い選択でした。今でも、在籍していた高校にもう一度戻りたいと思うことがありますが、戻るには再度受験が必要で、そのことが大きな壁となりました。
 僕は、病気や事故により長期間入院せざるを得なくなった生徒が、退院後、元の高校に籍を置きながら、特別支援学校で高校と同等の教育が受けられ、条件が整い本人が希望すれば、元の高校へ戻ることができるというシステムができればと考えます。もし、それが現行制度上難しく実現に向けては時間がかかるようであれば、高校と特別支援学校間の転学や編入が可能となるように配慮が必要であると考えます。
 そこで、教育長にお尋ねします。
 病気や事故は、僕だけではなく、誰しもに起こり得ることです。高校在籍中に、このようなことが起こった場合、奈良県では、本人が希望すれば、高校から特別支援学校に転学したり、回復の状況を見て、転学先の特別支援学校から元の高校に再度転学したりすることは可能でしょうか。在学の途中で病気や事故にあった生徒へ支援策全般を含めて、ご説明をお願いします。

【冨岡將人教育長 答弁(要旨)】

突然の病を乗り越え、新たに選択した道を力強く歩み始めておられる泉岡議員の体験は、同じような境遇にある高校生を勇気づけるものです。
在学中に病気や事故で長期入院や長期欠席を余儀なくされた生徒が、その高校での学習保障を求めたとき、相談や支援に応じていくことは大切です。
 医師の診断に基づき医療、生活規制が継続して必要な場合は、所定の手続きを経て、特別支援学校の病弱部門へ転学することも可能です。その後に医療、生活規制の必要性が生じなくなったときには、元の県立高校へ再度転学することが可能です。
今後も、高校在学途中に病気や事故にあった生徒に対して、医療機関や学校関係者が連携して、生徒の意向を尊重しながら、学校生活での支援や学習の内容、更には進路に関する教育相談を行うなど、より一層充実した支援に努めます。


【提 言】未来へ繋げる現在(いま)

奈良東養護学校高等養護部3年 富 友生 議員
奈良東養護学校病弱部3年   泉岡 大樹 議員

 僕からは、『未来へ繋げる現在(いま)』をテーマに荒井知事に提言いたします。
 僕は、高等養護部の1年生の時、社会の授業で奈良のことを学び、奈良には世界に誇れる素晴らしい歴史遺産や文化があることや、多くの観光客が訪れていることを知りました。しかし、一方で、県内で観光される方が、宿泊は京都や大阪でされているとも聞きました。この理由の一つに、宿泊施設の少なさが挙げられますが、果たしてそれだけなのでしょうか。僕は、奈良県の良さを知ってもらえるようなアピールがまだまだ足りないように感じます。「来たい人は来ればいい。」という待ちの姿勢ではなく、奈良県の歴史的遺産や文化を、多くの人に積極的に発信していく必要があると考えます。「現在(いま)」このような取組を行うことで、奈良県の観光が活性化し、それが他の分野に波及していくことで、将来、誰もが不安を感じず、幸せに暮せる住みよい奈良県づくりに繋がると思います。
 また、本校の病弱部では、慢性疾患だけではなく、精神疾患や心身症の生徒が在籍しています。その病弱部の設置場所等についてすでに様々なご議論をいただいていますが、僕たち、そしてこれから入学してくる生徒たちが安心して学び続けられるように、今後も、学校と病院との連携を視野に入れた病弱教育に対する支援をお願いします。すべての生徒が、「現在(いま)」、希望をもって安心して学校生活を送ることが、生徒たち、そして奈良県の未来に繋がることだと思います。
 是非、すべての分野で、奈良県の未来のために「現在(いま)」を充実させるという視点で他府県にはない思い切った独自の施策を展開していただくことをお願いします。 

【採決】

 全員賛成で採択されました。