活動日記  

県・県教育委員会・ならチャレンジドの恊働事業「地域社会で生きる!」特別支援生徒の社会参加および就労支援

活動日誌 2020年 8月

2020年8月30日

~ならチャレンジド設立10周年記念事業~

病院・高齢者施設で活躍する! 障害のある若者
就労現場からのレポート

●2020年8月30日 ●奈良県橿原文化会館小ホール
【報告】奈良県立医科大学附属病院、南和広域医療企業団 南奈良総合医療センター
    社会福祉法人奈良市和楽園
【配信】YouTube奈良テレビチャンネル https://youtu.be/TMAd4rePAxc

【奈良県立医科大学附属病院】
  風谷篤紀さん(34歳、短期大学卒、2018年11月採用)
  岡山弘美 障害者雇用推進マネージャー

2013年度から積極的に障害者雇用を進める。
現在、38名の障害者雇用推進係員がICUをはじめ全ての病棟の看護補助、病理部の検体作業、データ入力作業等に従事。


風谷篤紀さんと岡山弘美障害者雇用推進マネージャーの深い信頼関係がにじみでる、掛け合いによる報告です。風谷さんはごく自然に、自分の言葉で語られました。

  • 発達障害を知った時の気持ちは・・・
    「発達障害は23歳のとき知りました」「やっぱりと思いました。中学生のころから周りと違うと苦しんできました」「変化が激しい、臨機応変は精神的に負担が大きく、苦手です」
  • 実習生を指導して・・・
    「最初、実習生に厳しくしていたのですが、岡山係長からお話があり、やさしく、できることをほめるようにしました」
    「ながら作業ができるようになりました」「わからないことを聞けることが大切です」「また、いつもメモを取るようにしています」
  • 支援者へお願いしたいことは・・・
    「かなしい支援者は次の方です。
    ①理由をきかず頭越しに怒る ②短気 ③上から目線の人 ④仲よくなろうとベタベタする人 ⑤監視している人」
    「うれしい支援者は次の方です。
    ①わからないことを聞ける ②やりやすい方法を教えてくれる ③自分のことを何でも話ができる」
    「距離感が大切です」「個性が大切にされる社会になってほしいです」
  • 家族への思い・・・
    「家族は自分の人生を守ってくれる存在です」「家族が支えてくれています。すばらしい母です」「ありがとうございます」
  • 自分らしく生きる・・・
    「趣味は二次元の女の子です。仕事を頑張り、趣味を楽しみます。これからも一生懸命頑張っていきますので、よろしくお願いします。ありがとうございました」

岡山弘美障害者雇用推進マネージャー
「2年前の8月、実習でお会いし、超真面目、不器用、一生懸命に取り組む姿を見て、一緒に働きたいと思い採用しました」
「2年間で、できる仕事は増え、丁寧な作業で助かっています」「風谷くんとは何でも話しができ、2人だけの秘密の会話もあります」
「38名の係員は個性を活かして活躍しておられます。サポートするにあたり、私は ①任せる ②認める ③感謝する を心がけています」



【南和広域医療企業団 南奈良総合医療センター】
乾梨織香さん(看護補助、19歳、高等養護学校卒、2019年4月採用)
大西喜代子 看護師長

「南和の医療は南和で守る」基本理念のもと、奈良県、五條市、吉野郡11町村運営で同センターは2016年4月開院。
2019年4月、初めて知的障害のある看護補助者を採用。


就労して1年5カ月。乾梨織香さんの笑顔、意欲いっぱいの報告です。

  • 南奈良総合医療センターで働きたい理由・・・
    「実習のとき、患者さんが“ありがとう”と笑顔で言ってくださって、私が人の役にたっていると思うとうれしくて、勇気がでました」「人を笑顔にしたかったし、人の役に立ちたい、自分の実力を発揮したい、いろんな人に私を見てもらいたかったからです」
    「3回実習をさせてもらって、ここで就職したいと思いました」
  • 後輩へのアドバイス・・・
    「コミュニケーションと笑顔は大切です」「笑ったら皆さんが幸せな気持ちになります」
    「失敗しても反省して前に進むことが大切です」
    「メモを取ることも大切です」
    「先生方の言ってくださることは大事なので、聞いておくべきだと思います」
    「今の時間を大切にして、感謝の気持ちをもって、頑張ってください」
  • 将来の夢・・・
    「1つ目は介護資格を取って、もっと活躍できることが増えるようにしたいです」
    「2つ目はお父さんを養うことです」「生まれてから今日まで、ずっと私のことを育ててくれたのが、お父さんでした。どんな時も私の味方でいてくれたり、私のことを誰よりも応援してくれました」
    「お父さんに早く安心してもらえるようにします。それが私にできる親孝行だと思います」「夢が叶えられるようにこれからも自分に厳しくしていきたいです」

乾さんへの愛情いっぱい、「チーム看護部」満載の大西喜代子看護師長の報告です。
「実習で乾さんを見て、2点驚きました。1つは、覚えるのがはやく、丁寧で手際よい作業。
もう1つはお兄さんのも含めて弁当を自分で作っていることです」
「後輩の高等養護学校生徒実習の際、乾さんに実習計画、指導を一緒にしてもらい、楽しく実習ができました。乾さんの頑張る姿が後輩の励みとなり引き継がれるよう願っています」
「乾さんは笑顔でがんばっているので、1月、南和広域医療企業団企業長から特別賞を表彰され、病棟スタッフみんなで喜び合いました」
「私は乾さんが大好きです。スタッフみんなも乾さんが大好きで頼りにしています。内科病棟チームは乾さんを一人の看護補助者として見守り、応援していきます」


【中川幸士南和広域医療企業団企業長 挨拶】
「乾さんは笑顔でテキパキと働いていると聞いてはいましたが、今日の話を聞き、自分の目標を立て、しかも後輩の指導のことも考えており、びっくり。とても頑張ってくれています」
「10年前、私が県庁の医療担当課長のとき、ならチャレンジドの赤川さんと出会い、特別支援学校生徒が取り組んでいた“県庁ほのあかり”に看護師と一緒に参加しました」
「その後、医療現場の就労にむけて県立病院、医大病院の看護部長を赤川さんへ紹介させていただき、私も病院へお願いしました」「これは我々のチャンスだと思いました。1つは、医療現場では医師や看護師などの専門職が多く、業務と業務の間をつなぐ隙間で様々な仕事があり、これを担ってくれ病院がスムーズに運営できると期待しました。もう1つは、障害のある生徒と関わることで、医療現場で人育てする力がつき、職員のためになると思いました」
「職場実習は本人も受け入れ側もお互いに学ぶ機会であり、採用へつながる、とても有意義な取り組みです。今後、採用を考えている病院は、是非、職場実習を取り入れてください」
「障害のある人たちは医療現場で大切な戦力であり、活躍してくれています」
「この10年間、医療現場、関係者の努力の結果、医大病院をはじめ奈良県内の医療現場でここまで拡がってきました。その“炎”をともらせ、つなげて来られた、ならチャレンジドさんの取り組みと情熱に感謝します」



【社会福祉法人 奈良市和楽園】
樫葉勇輝さん(18歳、高等養護学校卒、2020年3月採用)
茶山健さん (18歳、高等養護学校卒、2020年3月採用)
竹内義朋 施設長

1932年、和楽園は奈良市民生児童委員により設立。
現在、奈良養護学校卒1名(介護補助)高等養護学校卒3名(清掃)が従事。


樫葉勇輝さん、茶山健さんは司会者の質問に応え、働く意欲、将来の夢等を語りました。

  • 奈良市和楽園で働こうと思った理由を教えてください。
    樫葉さん:「実習の時に利用者の方や職員の方が明るくて、やさしかったところが好きだったからです」
    茶山さん:「実習をした時、トイレと洗面台がきれいになって、楽しかったです。掃除が好きだからです」
  • 初めての給料は、何に使いましたか?
     樫葉さん:「自分の好きな漫画きめつの刃と雑誌まんがタウンを買いました」
       茶山さん:「陸上の1万円ぐらいのシューズを買いました。残りは貯金をしました」
  • 仕事をしてて、大変なことやしんどいことは何ですか?
    樫葉さん:「拭き掃除とトイレ掃除の時、かがむから腰や背中が痛くなって、たいへんです。そんな時は、腰を伸ばしたり、背伸びをします」
    茶山さん:「来客用トイレの清掃で、水を流したり、スプレーを使ってゴシゴシするのが 大変です」
  • 仕事をしてて、楽しいことやうれしいことは何ですか?
    樫葉さん:「掃除をしている時に“キレイに掃除をしてくれて、ありがとう!”と、言ってもらえたことがうれしかったです」
    茶山さん:「洗面所やトイレ清掃で、汚れているのをピカピカにすることです。おじいさん、おばあさんに“ご苦労様”“いつもきれいにしてくれて、ありがとう!”と、言ってくれるのがうれしかったです」
  • これからの目標、将来の夢は何ですか?
    樫葉さん:「火曜日、木曜日はきょ室、ろうかをしていますが、がんばって、食堂やトイレもできるようになるのが目標です」
    「お金をためて、1か月に1回、虹の湯というお風呂屋さんへ行ったり、好きな漫画を買いたいです」
    茶山さん:「今は3時15分まで仕事だけど、もっと長い時間、働きたいです」
    「夢は、陸上400mで来年の東京パラリンピックに出場することです」
    「火曜日、木曜日は鴻池陸上競技場に行って、月曜日、金曜日は橿原陸上競技場のナイトランに行って、ひとりで練習しています。
    土曜日は高等養護学校本校のグランドで練習しています。先生が来れない時は、家の近くの白川ダムに行って、坂道を練習しています」

竹内義朋施設長は2人へのあたたかい期待、将来へむけた構想を語られました。
「真面目で一生懸命、丁寧な作業なので採用を決めました」
「利用者様からのお礼の言葉に、本当に喜んでいる気持ちを素直に出してくれたのが、ほほえましかったです」
「2人は強みをしっかりと活かし弱みの改善に挑戦して、将来の和楽園を担ってほしいと期待しています」
「和楽園は今後、児童発達支援事業、障がい者就労継続支援事業を展望しています。障がいのある職員は毎年、継続して採用します」



3事業所からは若者の頑張り、若者と職員さんの良好な関係が語られ、障害者就労の核心にふれたレポートでした。
「ありがとう」と言われ、人の役にたっている実感が若者の成長の源です。若者のありのままを受け入れ、そして、若者のよさ=強みを見つけ、活躍できる場、環境を整えることが職場の役割であることを実感しました。
若者たちと信頼関係を築けるか否かが、とても重要なことです。
「お互いわからないことを聞ける」そんな関係になれば若者は持っている能力以上のものを発揮し、職場で「なくてはならない存在」となります。
誰もが若者と最高なパートナーとなり、一緒に成長できるのではと思いました。
私は、障害のある若者が世の中の“ど真ん中”で大活躍してくれることが夢であり、願いです。

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