活動日記  

県・県教育委員会・ならチャレンジドの恊働事業「地域社会で生きる!」特別支援生徒の社会参加および就労支援

活動日誌 2021年 6月

2021年6月13日

~患者さんのために病院で活躍する!~

就労現場からのレポート

ならチャレンジド総会・記念講演
●2021年6月13日 ●橿原市コンベンションルーム
【報告】南和広域医療企業団 吉野病院
    医療法人弘仁会 南和病院

1.南和広域医療企業団 吉野病院
    看護師長  杉本誓子さん
    看護補助者 内田博巳さん
    看護補助者 福森捷登さん(20歳、高等養護学校卒)


◆看護師長 杉本誓子さん
  南和広域医療企業団 吉野病院
   【所在地】吉野郡吉野町丹治130-1  【障害のある看護補助者】1人
   【病 床】慢性期、地域包括ケア病床、療養型病床96床
  私は4月の異動で吉野病院へ来て2か月。福森さんとお会いして、元気よくあいさつをする、患者さんの部屋の出入りの際、お辞儀をするする姿に真面目と思いました。
  当時の看護部長に採用の決め手は「真面目」「礼儀正しさ」と伺っています。
  2020年12月、福森さんは真面目に勤務する姿が評価され、南和広域医療企業団企業長から特別表彰されました。
  福森さんの日々の姿は、いつも職場で一緒の内田さんから報告をします。

◆看護補助者 内田博巳さん
  福森さんが高等養護学校生徒だった時の職場実習から関わっています。
  福森さんの主な仕事は次のとおりです。
   ①洗濯物の取り入れ・・・福森さんは自宅でもしており、ていねいです。
   ②おしぼりの作成・・・1日に50~60本巻きます。
   ③ゴミ収集   
   ④環境整備・・・ベッド周辺、手すり等の清掃を根気よくしています。
   ⑤使用物品の洗浄、消毒
   ⑥吸引チューブの補充
   ⑦機械浴室の片付け、清掃 等々です。
  昼食を食べる際、福森さんは「いただきます」「ごちそうさま」と必ず言っており、感心しています。
   3年前、職場実習を初めて受け入れる際、支援機関の方から3つのことを教えらました。
   ①指示は明確にする ②複数の指示は出さない ③できる限り担当者は変えない
  福森さんは3年間努力を重ね、今では、いろいろなことができるように成長しました。
   ①目的を告げれば、自分なりのやり方を考え、できるようになりました。
     ②臨機応援の対応ができるようになり、指示プラスαの行動ができています。
   ③目配り、気配り、心配りができるようになっています。
    「若いのにがんばっているなぁ」と患者さんから聞き、誇らしく思います。
    私も福森さんのピュアな素直な姿に癒されています。
  福森さんが多くの人、家族等へ感謝する姿は感心させられます。今後も同じ職場の仲間 として一緒に頑張っていきたいと思います。

◆看護補助者 福森捷登(しゅうと)さん(20歳、高等養護学校卒)   吉野病院で働いて2つのことがよかったと思います。
  1つ目は、家の手伝いをしていた清掃が仕事に発揮できています。ていねいにするだけでなく、時間を有意義に使えるようになりました。
  2つ目は、自分の存在を必要としてくれていることです。
 「ありがとう」「これまで時間に追われていたけれど、福森くんが来てくれて、業務がスムーズになり、助かるわ」と言われ、働き甲斐を感じます。
  3年間を振り返ると、1年目は苦労と努力でした。
  吸引チューブの補充は、形、大きさもバラバラで難しかったです。覚えるのには時間もかかりましたが、やりがいを感じていました。
  2年目は時間厳守です。ていねいな作業をしていましたが、いつまでのその作業をする、限られた時間内に作業をするように努力してきました。
  3年目は特別室の機械式風呂の清掃・消毒することを目標にしています。
  自分を必要として受け入れてくれたお陰で、努力し、今では周囲の見通しができ臨機応援にできるようになりました。患者さんや医療スタッフのために、できる業務範囲を広めていきます。

 《生徒の皆さんへ》
  仕事を決めるうえで2つのことが大切です。
  1つは、勤務形態、保障がしっかりしているところを選んでください。
  私は最初の1年目は時給でボーナスも退職金もなく、給料日も違い、不公平と感じていました。2年目からは会計年度職員となり月給、ボーナスもあり、共済金の貯金もできるようになりました。また、懲戒処分対象にもなり、その分、責任感を感じるようになりました。
  2つ目は、自分らしくでき、居場所と思える職場を選んでください。
  私は一度も仕事を辞めたいと思ったことはありません。自分が役立っているだけではなく、気楽に話ができるようになったからです。
  自分の居場所を見つめ、努力し、周りの人たちに感謝すれば、夢や希望は実現すると思います。

 《家族の皆さんへ》
  お父さん、お母さん、家族のみんなに感謝します。
  多くの人、家族のみんなのお陰です。今は大きな夢はありませんが、毎日、努力し大きな夢や楽しみを見つけていきたいと思います。

2.医療法人弘仁会 南和病院     看護師長  窪香予子さん     看護補助者 中嶋彩翔(あやか)さん(18歳、高等養護学校卒)


◆看護師長  窪香予子さん   医療法人弘仁会 南和病院
   【所在地】吉野郡大淀町福神1番地181 【障害のある看護補助者】1人
   【病 床】一般病床42床、長期療養型病床96床
  南和病院は今年初めて特別支援学校卒業生を採用しました。中嶋彩翔さんにはそれぞれ違う病棟において、3回の職場実習をしていただきました。
  中嶋さんは、ていねいな作業をされ、真面目なので採用を決めました。
  採用から2カ月余り。現在、病棟3階に所属し、28名のスタッフの1員として活躍してくれています。主な作業は次のとおりです。
  【勤務時間】8時45分~16時 (休憩時間45分)
   ①談話室の環境整備等(机、アクリル板の清掃、消毒)
   ②おむつセット
     おむつ、パット、タオルをセットします。サイズはS、M、L、LLとあり、指示された数を揃えます。    ③配茶
     患者さん一人ひとり飲む種類(とろみ茶もある)、量が違う(水分調整の患者さん)ので、間違わないように気をつけながらしてくれています。
   ④ベッドメイキング
     半日で10組、1日で20組のベッドメイキング。ていねいな作業で、しわがなく、ピンとシーツが伸びています。
   ⑤病棟の温度、湿度チェック。冷蔵庫の温度チェック
   ⑥ガーゼの四切り、クロスの切り分け等
   ⑦書類の分別等
  【週間のスケジュール】
   ・月、木・・・ベッドシーツ交換
   ・火  ・・・車いす、ストレッチャー点検、清掃
   ・金  ・・・土、日のおむつセット
  中嶋さんの仕事は患者さんのためになる仕事です。中嶋さんのお陰で、ベッドサイドの看護師の仕事は時間短縮になり、とても助かっています。コツコツ素直に働く姿は、私たちも気持ちがよくなります。
  また、中嶋さんが働きだしてから、職場でお互いを尊重するようになってきました。
  中嶋さんができる仕事はたくさんあるので、頼りにしています。今後の成長を期待しています。一緒にがんばりましょう。

◆看護補助者 中嶋彩翔(あやか)さん(18歳、高等養護学校卒)
  3回の職場実習は、今の仕事につながっています。患者さんやいろんな人の役にたちたいので、南和病院で働こうと思いました。
  「失礼します」と言って、部屋の出入りをしています。清掃はふき残しがないように、ていねいにしています。おもつセットはサイズも数もバラバラなので、間違わないようにしています。配茶は患者さん一人ひとり違うので、気をつけています。
  この前、消防訓練に参加して、初めて消火器を使用しました。
  最初、病室は緊張しましたが、今は慣れてきて患者さんともコミュニケーションが取れるようになりました。みなさんがやさしく教えてくれるので、がんばります。

 講演後、質問、意見交流がありました。
 質問では、若者2名へ「ストレス発散は、どんなふうにしていますか?」があり、福森さんは「図書館へ行ったり、小説などの本を読んでいます」。中嶋さんは「Jポップなどの音楽を聞いています」。 それ以外にも多くの質問、意見が出て、更に交流が深まりました。
 若者2人が努力を重ね、できる業務をひとつずつ増やし、現場の戦力になっていく成長が力強く感じられました。若者と看護師等との“信頼関係”が若者の意慾や成長をもたらしています。

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