活動日記  

県・県教育委員会・ならチャレンジドの恊働事業「地域社会で生きる!」特別支援生徒の社会参加および就労支援

活動日誌 2022年 1月

2022年1月11日

毎月11日は「人権を確かめ合う日」県民の集い第18回シンポジウム

誰ひとり取り残さない社会をめざして

~人権のまちづくりを進めよう~

【配信】2022年1月31日(月)17時まで
  https://www.youtube.com/watch?v=TFxMfQah1DU
【コーディネーター】髙松秀憲さん(奈良県人権擁護委員連合会 会長)
【パネリスト】   富田忠一さん(社会福祉法人ちいろば会 統括管理者)
          赤川義之  (NPO法人ならチャレンジド理事長)
          安田賢行さん(公益財団法人反差別・人権研究所みえ研究員) 【主催】市町村人権・同和問題「啓発連協」

赤川義之 NPO法人ならチャレンジド理事長

 私はビル管理会社の経営者をしています。30数年前、初めて高等養護学校の卒業生を雇用しました。最初は仕事を教えるのに何倍もの時間や労力を費やしましたが、人が見ていなくても一生懸命働く彼らの姿に心を動かされました。また彼らは言うことと行動が一緒なのでとても気持ちが楽でした。 
 そんな生徒たちにもっと社会で活躍して欲しいと願い、2010年NPO法人ならチャレンジドを立ち上げました。100%ボランティアで活動を続けています。県立特別支援学校と連携して学校と地域社会を繋ぐ橋渡し役です。当初は心が折れそうにもなりましたが、かつて部落解放運動をともにした企業や行政のみなさんから、「とにかくいっぺんやってみよう」と応援していただきました。

社会参加活動 成功体験を積み重ね、自己肯定感の獲得

 2011年7月「差別をなくす強調月間」の市町村民集会で、初めて特別支援学校の生徒たちが受付係として参加できました。どの生徒も自分が人の役に立ったことを喜び、なかには生まれて初めて人から「ありがとう」と言われた生徒もいました。受け入れ側の担当者も、「来場者が生徒に声をかけるなど、優しい雰囲気になりとても良かった」と喜ばれました。
 私は「これだ!」と確信しました。生徒たちは小さな成功体験が自信になり自立につながります。関わった人たちも優しくなりあたたかい雰囲気になります。生徒の社会参加が生徒自身と社会を変えていくのです。

就労現場が拡がる

 就労では、県内の代表的企業や市町村の図書館、保育園、病院等で職場実習を始めました。看護師さんたちは生徒の実情に応じた柔軟な対応をしてくださいました。おかげで今、奈良県立医科大学附属病院の38名をはじめ、県内の医療機関では約60名の障害のある若者が働き、どの現場でも貴重な戦力として評価されています。
 本人の頑張りもありますが、就労成功の鍵は受け入れ側の力量にかかっています。受け入れる人たちが本人の苦手なことを理解し、本人のできることに着目しその能力を現場で発揮できるようにすることです。

しんどい思いをしているのは誰? 思いを言える関係性の構築を!

 私は部落解放運動にかかわる中から、「しんどい思いをしている人の立場から社会を見てみよう。そうすれば今までと違った社会の課題がわかる」「現象面だけを見るのではなく、その背景の課題を探ることが大切」という二つを学びました。
 この4月~6月にかけて、県内11市町の図書館で知的障害者の命を脅かす差別文書が見つかりました。この差別文書を書いた若者Aさんはなぜこのような行為をしたのでしょうか。私は障害があると思われる若者Aさんが、自分の居場所がなく誰かに訴えたい、そんな悲痛なSOSだと受け止めています。望む支援が受けられず、孤立してきたAさんの姿を想像しています。しんどい思いをしているAさんと向き合い、一緒に考えていくことが今回の課題であると考えています。
 私たちは活動で二つのことを大切にしています。
 一つは、「主役は障害のある若者」です。本人の意向や事情を無視した対応は支援ではありません。障害のある若者には力があります。周りの人たちが彼らの苦手や得意をよく理解し活躍できる機会を提供できれば、いろいろな場面で活躍できるのです。
 もう一つは、「思いを言える関係」です。就労が成功している現場は、本人と周りの人たちのコミュニケーションがうまく取れています。行き違いを話し合いで解決する過程は職場の包容力、多様性を深め、誰にとっても働きやすい環境づくりにつながっています。そのためには、私たち一人ひとりが、障害のある若者、しんどい思いをしている人たちと「本音」でかかわり、そのありのままの姿に共感することが必要です。そこから信頼関係が生まれ、本当の思いを言える関係が生まれるのです。私たちが、障害のある若者、しんどい思いをしている人の願いを聴けるように変わる必要があります。
それこそが、誰ひとり取り残されない社会に向けた第一歩であると思います。

NPO法人ならチャレンジド