活動日誌 2014年 6月
2014年6月7日
ならチャレンジド総会・記念講演会
~職場実習から就労へ!~ 保育園からのレポート
●2014年6月7日 ●奈良県社会福祉総合センター
【講 演】社会福祉法人葛城福祉園 平岡良子園長
三宅町立三宅幼児園 吉井五十鈴園長
【インタビュー】
社会福祉法人葛城福祉園・桜井学園
山下裕斗さん(県立高等養護学校卒)
三宅町立三宅幼児園 山平北斗さん(県立高等養護学校卒)
●山下裕斗さん(左)山平北斗さん(右) 写真提供:毎日新聞社
●平岡良子園長・社会福祉法人葛城福祉園 ●吉井五十鈴園長・三宅町立三宅幼児園
ならチャレンジド総会後、70名を越える方々が記念講演会へ参加してくださいました。
社会福祉法人葛城福祉園・桜井学園は2012年4月から、三宅町立三宅幼児園は2014年4月から県立高等養護学校卒業生を雇用されています。平岡良子園長、吉井五十鈴園長は雇用へと至る経緯、卒業生の仕事ぶりや成長、職員さんの関わり、今後への期待等を講演されました。
また、山下裕斗さん、山平北斗さんは、県立高等養護学校辻善文先生からのインタビュー形式で思いを語られました。その後、参加者から感想・意見が出され、交流を深めました。
◎平岡良子園長・社会福祉法人葛城福祉園
- 現在、2保育園、母子寮の運営を行っています。理事長の「困った人の目線にたて」の精神で、いつも人権を中心に現場で解決する草の根運動として取り組んでいます。
- 2011年10月、旧知の仲の赤川さんの依頼で山下くんを職場実習で受け入れました。 初めて山下くんと出会ったとき「きれいな目をしているなぁ」と思いました。実習では運 動会を体験していただき、「いちばん働いているのが山下くん」と理事長が認め、採用へと 至りました。
- 障害は個性としてとらえています。山下くんは、子どもたちにとっては同じ目線で働いて くれるお兄さんのような存在です。いつも「ゆうと先生、ゆうと先生」と5歳児から慕わ れ、2年が過ぎ、だんだんりりしくなってきており、うれしく思います。理事長は「山下 くんは素晴らしい子。将来、所帯も持つだろうし、給料もあげなあかん」と言っています。
- 山下くんは、園の子どもや親へ山下くんのようになりたいという勇気を与えています。国 家資格(保育士)がなくても、保育園は障害ある方を数パーセント雇わないといけない制 度ができるように、今やっているところから世論をつくっていきたいと思います。
◎吉井五十鈴園長・三宅町立三宅幼児園
- 2010年、赤川さんの熱意を感じ、ふたつ返事で初めて高等養護学校生徒(三宅幼児園 卒)を職場体験で受入れました。
- 障害ある方の雇用は、民間保育園でしかできないのかなぁ、公立では無理かなと思ってい ました。2012年11月、志野町長と一緒に桜井学園を見学させていただき、とても自 然体で心地よい空間だと感じました。志野町長が「三宅幼児園で雇用していこう」と決断 され、それから1年間かけて体制づくりを行い、この度、採用へと至りました。
- 山平くんは「失礼します」「ありがとうございます」と挨拶をしてくれ、とても礼儀正しい です。わからないことは「これでいいですか」といつも聞きに来てくれます。5歳児クラ スだけではなく、0歳児に入り抱っこをしてもらっています。
- 障害ある息子さんをもつ保育士が「一筋の光が見えた」と話しています。職員の気持ちが 豊かなになることで保育が豊かになっていくと思います。山平くんと一緒に働くことで共 に成長していきたいと思います。職場体験から雇用へのモデルケースとして、他の市町村 へ拡がることを願っています。
■辻善文先生・県立高等養護学校進路指導主事
今回のお話をいただいてから、二人が働いている現場にお邪魔して、取材と打ち合わせをしました。「この部屋です」って案内してもらったんですが、そこにおるのに、すぐには見つけられへんで、「ん?ん?」っていう感じで探しました。
何か、二人とも現場の風景に溶け込んでいて、こいつ、無茶苦茶なじんどるなぁっていう感じがしました。
二人とも、ちょっと緊張していると思いますが、大丈夫やで、先生の方がバクバクやから。
山下くん。そうやなぁ、幼稚園とか保育園で雇用してくれるとこなんかないやろ~って先生らも思ってたし、相談受けても、「ん~」っていうだけで、先生らがチャレンジできてなかったわ。それが、平岡園長さんが受けてくれはるっていう話を聞かしてもらって、実習さしてもらったら、ピタッといって就職に結びついて、ほんま良かった。先生らがすごく勉強になったわ~
山平くん。はい、山下くんのことはあったけど、「マジかぁ?」っていう感じやったなぁ。この時は、試験があったから、発表があるまで、ドキドキやったやろ?
二人ともめでたく希望する仕事に就けました。
今日は、二人に、「仕事につくまでの経緯」「働いてみて感じること、考えること」「これからのこと」について、聞いてみたいと思います。
◎山下裕斗さん・社会福祉法人葛城福祉園 桜井学園
- 今の職場で働くことになるまでの取り組みを教えてください。
- 3年になって、どんな実習をしましたか?
- 職場で気をつけていることは何ですか?
- 職場で気をつけていることは何ですか?
- これまで働いてきて、一番うれしかったことは?
- 給料、人のために使ったことはありますか?
- これからチャレンジしたいことは?
- 園長先生に一言
グループ実習で、プラスチックの工場とか、クリーニングの工場に行きました。
インターンシップで、川西幼稚園に行きました。
スーパーの実習をしたことがなかったので、スーパーで実習しました。
やってみて、どうやった?あんまり自分には、むいてないかなと思いました
それからどうした?小さい子が好きで、幼稚園の実習が一番よかったから、幼稚園で働きたいと思い ました。
園庭で遊ぶ時、子どもらが、ケガをしないように、気をつけてみています。
苦手な仕事、難しいと思う仕事は何ですか?今はやってないけど、子どもたちのお母さんと話すのはちょっと苦手で不安です。
園庭で遊ぶ時、子どもらが、ケガをしないように、気をつけてみています。
給料をもらったことです。自分の働いたお金で服を買いました。
仕事は毎日楽しくて、これまでやめたいと思ったことは一度もありません。
お母さんに、ブレスレットを買ってあげました。
車の免許をとりたいです。
保育士の資格も取りたいです。
これから、もっとがんばるので、給料を上げてください。
◎山平北斗さん・三宅町立三宅幼児園
- いまの職場で働くことになるまでの取り組みを教えてください。
- 職場で気をつけていることは何ですか?
- 苦手な仕事、難しいと思う仕事は何ですか?
- これまで働いてきて、一番うれしかったことは?
- 給料、人のために使ったことはありますか?
- これからチャレンジしたいことは?
- 園長先生に一言
グループ実習で、工場とか、スーパーに行きました。
インターンシップで、三宅幼児園に行きました。
「幼児と関わる仕事」か、「調理の仕事」で就職したいと思っていました。
「奈良健康ランド」の調理場で実習させてもらって、「ここで働こう」と思っていました。
11月くらいに、三宅幼児園の募集があって、気持ちが、ゆらぎました。
自分はどうしたいか、もう一回考えて、親とも相談して、「やっぱり幼児と関わる仕事」をしたいと思って、受けました。
ひとりひとり個性があるので、接し方に気をつけています。
3,4歳の子どもを寝かせるのが難しいです。なかなか寝てくれないので、、。
4歳児の前で絵本を読み聞かせする時、聞いてくれないのでどうやって前を向かせるかっていうのも難しいです。
子どもが「山平先生、これやって」とまわりに寄ってきてくれるとき、「頼られてる」って感じることです。
初めて給料もらったときに、家族を「さと」につれていってあげました。
しゃぶしゃぶの食べ放題を食べました。
いつかはクラスを持ちたいので、保育士の資格を取りたいです。
車の免許も取りたいです。
毎日がんばって働きます。これからもよろしくお願いします。
はい、新人のフレッシュな決意表明と、もう中堅なみに、労働者としての意識が高まった発言をいただいたところで、インタビューを終わらせていただきます。最後に、これからも活き活きと活躍してくれるであろう二人に、励ましの拍手をお願いします。
■参加者の感想(アンケートから)- 実際に働いている本人の話をきけてよかったです。職場で仲間や上司としっかり絆を深め ておられる様子がよくわかりました。
- 本人ががんばっていること、園長さん側、本人側の両方から話をきくことができてすごく よかったです。本当に他の市町村にも拡がり、障害がある人も当たり前に働いている職場 となっていけばよいと感じました。
- 現在保育園に勤務していますが、以前に中学生の職場体験で発達障害の子を受け入れた時 のことを思い出しました。本当にまじめで子どもに向き合い、ずっとずっと遊びにつきあ っていた姿を思い出しました。その子たちが保育園で働きたいと思ってくれる環境を作っ ていきたいです。
- 今日は山下くん、山平くんのインタビュー等お疲れ様でした。まじめに保育に向きあって いる姿に感動しました。
- やっぱり現場の話がいちばんです。
- お二人の取り組みが本当に学校、保護者に明るい希望を与えてくれていると感じています。 彼らが長く働ける環境を今後築きあげていってほしいと思います。
- 本人たちの話がきけたこと、参加者からの意見もきけたこと、本人たちの支援者も参加し てくれたこと、行政のトップも参加してくれ、よかったです。
- 山下さん、山平さんの話がとてもおもしろかったです。
- 実践例をたくさんきくことができよかったです。
- 働く本人と関わるサポートする方々の生の声がきけて、励みになりました。高等養護学校・ 辻先生のインタビューがとてもわかりやすく、ご本人の考えがよくわかりました。
- 少しずつ行政の横のつながりを持っていただき、雇用してもらえるようになってくるので はないかと期待できました。
- 障がい者雇用の新しい職域を開拓されたこと、素晴らしいと思います。送り手と受け入れ 側の熱意が感じられました。
- 山下くん、山平くんはとても稀な成功例ですが、こうした成功例が「稀」でなくなる時代 が来ればよいと思います。そのためにも、失敗例などから解決していかなければならない 課題を整理する作業も必要でしょう。
- 幼児園という道が広がり、とても希望が広がりました。講演をきけてとてもよかったです。
- 障害児施設の管理者です。今回の記念講演は障害児の保護者にとって大きな希望を与える ないようであったと考えます。
- 障がい者雇用の仕事につきたいと思っている者です。障がい者を雇用する側の心構え、障 がい者として雇用される側の心境に触れることができました。
- 大変心温まる力を得た会でした。今日のような実例が人をつなげていくものと思います。
- 新しい取り組みなので多くの課題がありますが、一つ一つ前向きにチャレンジされている 姿に感銘いたしました。これを参考に私達の事業でも働く場を広げるヒントになりました。