活動日誌 2018年 9月
2018年9月22日
医療・就労・アートをつなぐフォーラム(第2部)
●2018年9月1日 ●県立医科大学 大講堂
【テーマ】医療現場で活躍する特別支援学校生徒、卒業生たち
【報 告】石原昌伸 奈良県障害福祉課長
高橋美雪 奈良県立医科大学附属病院副院長/看護部長
岡山弘美 奈良県立医科大学障害者雇用推進マネージャー
【進 行】NPO法人ならチャレンジド理事長
【主 催】奈良県立医科大学、奈良県立高等養護学校、NPO法人ならチャレンジド
開 催 趣 旨
奈良県立医科大学附属病院は県下最大の医療機関であり、県内の医療機関をリードするとともに最先端の医療を提供する、県民にとっては「命」を守る最後の砦です。
2012年、初めて県立高等養護学校生徒の職場実習(看護補助)を取り組んで以来、現在、32人の特別支援学校卒業生らが元気に就労する病院に至りました。これも看護師等の皆さんの並々ならぬご支援のお蔭と感謝するとともに誇りに思っております。この県立医科大学附属病院において、医師、看護師、医療関係者等と特別支援学校生徒、卒業生たちが一緒にフォーラムを開催することは、医療現場における障害のある人の社会参加と就労を考える新たな歴史の1ページです。
また、2016年からは、患者さんと生徒の交流を目的に「特別支援学校と病院を結ぶ!奈良県立医科大学付属病院アート展」を開催しています。作品を見られた患者さんから「明日の手術に勇気をいただきました!」等の感想が寄せられ、生徒たちは、好きな絵や作品が人の役に立っていることを実感しています。作品が一人ひとりの患者さんを勇気づけていくのを目の当たりにして、医療従事者の皆さんも改めて障害のある人の“力”を感じていただけていると思います。
生徒や卒業生は、県立医科大学附属病院の理念である「地域から信頼され、患者さんと心が通い合う人間味あふれる病院をめざす」の一助になっており、障害のある人が患者として病院にお世話になるだけではなく、病院のために、ひいては広く患者の皆さんに寄り添える存在なのです。
さて、本日のテーマは「医療現場で活躍する特別支援学校生徒、卒業たち」です。
生徒や卒業生には、直接、思いを訴えていただきます。その姿から多くを学ぶことでしょう!
パネラーの皆様からは体験を通して気づいたこと、新たな発見や普遍的な価値観を語っていただきます。このフォーラムをとおして、障害のある人の社会参加や就労の意義を探り、全国各地で確かな“共感の芽”が育ち、誰もが生き生きと暮らせる社会を願っています。
◆石原昌伸 奈良県障害福祉課長
○県の障害者雇用への取り組み状況
・県障害福祉課に障害者雇用促進係を設置
・様々な仕掛けづくり
「障害者はたらく応援団なら」の設置、「障害者政策推進トップフォーラム」の開催
「就労連携コーディネーター」の配置、県庁での職場実習の受け入れ促進
「障害者雇用促進ジャーナル」の発行、ガイドブックの配布・セミナーの開催等
・成果と課題
○今後の県の障害者雇用の取り組み
・継続は力なり
「職場実習の充実」、「障害者理解の促進」、「職場定着支援」、「情報の共有」等
◆高橋美雪 奈良県立医科大学附属病院副院長/看護部長
○障害者の受け入れ体制の構築
・障害者雇用を受け入れることで現場の多忙解消につなげようと考え方の切り替え
・担当業務の開拓
・現場での支援、指導体制の構築
・看護部と障害者雇用推進係との連携、連絡体制の構築
○障害者雇用の評価と今後の受け入れ
・病院における患者サービスの向上に貴重な戦力
・受け入れ体制を整備することで、当初持っていた懸念は払拭
・今後は業務をさらに拡大の方向
「係員のみなさんはキチンと挨拶をしてくれます。私たちが学ぶことがたくさんあります。
私たちの指示が曖昧で具体的でなかったことに気づきました」
「係員のみなさんは、病棟ではなくてはならない存在であり、とても助かっています」
「アート展を見に来られた患者さんが元気になっていく姿は、うれしいです。障害のある人の
作品が持つ力強さ、やさしさ、癒す力だと思います」
「院長は50人を目標とされていますので、今後は職域を拡大し、係員の人数を増やしていき
ます」
「ひとりの人として認められ、褒められ、人の役にたつ、必要とされる、愛されることが究極
の幸せだと伺ったことがあります。私もその通りだと思います」
◆岡山弘美 奈良県立医科大学障害者雇用推進マネージャー
○奈良医大では平成25年から障害者雇用に取り組む
・最初、障害者を受け入れる部署は少ない
○各部署で障害者を受け入れてもらえるように取り組む
・障害者雇用の受け入れを病院へ働きかけ
・各部署において仕事を指示する支援者を置いてもらえるように依頼
・障害者たちにはチームで判断して自主的に動けるように指導
○各部署での実績があがり、いろいろな仕事の依頼がくる
「障害のある係員に支えられ、たくさん学んだことに感謝です。障害者である前にひとりの
人として接してきました」
「病院長、看護部長、看護副部長、看護師長をはじめ医療現場の方々と上手く連携できたの
で、ここまで雇用が進んだと思います」
「誰しも得手、不得手があるので、実習をとおして適材適所へ配置できるように本人の適性
=できることを発揮していただけるようにしています」
「職場ではいつも“任せる”“認める”“感謝する”を基本にしています。係員を信頼してい
るので、PHSを持ってもらい“任せたよ”と言っております。PHSでちゃんと報告が
あります。また、“ありがとう”をいつも言っています。これが係員の成長につながってい
ます」「支援者の理解があれば、もっと障害のある人の職場は拡がります」
「係員には、今後、自立を願っています」
群馬、長野、東京、大分、京都、大阪等の全国各地から約350人が参加。
3人の報告後、会場から4人の方が質問、意見が出され、更に議論が深まりました。障害のある人の力に気づき、その力を発揮できる環境=受け入れ側の力量が問われていることを共有できました。
全国各地で障害のある人の社会参加と就労が確実に進むことを願っています。
NPO法人ならチャレンジド